◆四季折々.....2001/03/23:散歩道(少年と鐘、不思議な出会い)
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帰ろうとした時、お寺へ鐘を撞(つ)きに行くところだという、見知らぬ少年と出会う。
「ここの鐘は、とてもいい音がするのを知っているか」と私に尋ねる彼とその鐘に興味を持ち、少年にお供することに。
鐘の音は毎朝夕決まった時間に響き渡る。それ以外に、人々が自由に撞いているのは知っていた。
私は、まだやったことがなかった。
少年にやり方を教えてほしいと頼んだ。
少年は、鐘とその音色をしきりにほめる。何かとても思い入れがあるようだった。
聞くと母子家庭で、母親は病気だという。
そして、彼自身も春からこの地を離れ、別の小学校へ転校するらしい。
その鐘にどんな思いがこめられているのだろうか。
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(少年がレンズを通してとらえた鐘)
(何度も鐘を撞く少年)(鐘楼:少年の目)
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私は花の写真を撮っていたのだというと、「僕が鐘をついてるところをとって下さい」と言い出す。
「次はお姉さん鐘の横に」とその後は、カメラを離さずに、さまざまな角度から鐘の写真を撮り続ける。
「この鐘は、本当にいい音なんです。」と何度も言いながら。
「今度は、君自身のカメラを持ってきたらいいね」という私に、「僕んちには、カメラもフィルムもないんです」とぽつりと言う。
「お姉さん、明日もこの場所で待ち合わせしようよ」と彼は言った。
「ごめん、お姉さん、仕事だから来られない」
今日だけの思い出にしたほうがいいと思った。
分かれ道、少年が握手を求めてきた。私もお礼を言った。「教えてくれてありがとう」。
これが最後かもしれないのに、「またね」と互いに名前も聞かずに別れた。
家に帰って、デジカメの中身を見た。
30枚ほどのさまざまな鐘の姿。
シャッターボタンを押すたびに、心に刻み込もうとしていたのだろうか。
どうかこの鐘が、少年の心のフィルムに焼きつくようにとただ願うばかりだ。
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